国際奉仕
パキスタン ポリオ根絶ミッション活動報告
カラチの現場で見た、根絶への道のりとこれからの挑戦
カラチの現場で直面した過酷な現実
活動の具体例として、私が足を踏み入れたパキスタン最大級の都市カラチでの緊張感あふれる現場について共有いたします。
現地では過激派等による危険も伴うため、警察や特殊部隊の重厚な警備のもとで活動が進められます。私やポリオワーカーたちは、鉄道の駅のホームに立ち、あるいは高速道路でバスを一台ずつストップさせながら、車内の子どもたちに手作業でワクチンを投与して回りました。
二重投与を防ぎ、確実に接種済みであることを識別するため、投与を受けた子どもの左手薬指には紫色のインクで印をつけます。過酷な環境下であっても、一人の子どもも見落とさないための知恵と努力が積み重ねられています。
ポリオの基礎知識と現地のワクチン事情
まず知っていただきたいのは、ポリオ(急性灰白髄炎)という病気の恐ろしさです。ウイルスが脊髄に感染することで手足に一生残る麻痺を引き起こし、有効な治療薬が存在しないため、ワクチンによる予防しか命と未来を守る術がありません。感染経路は主に乳幼児の口からの侵入であり、便を介して地域全体へと広がっていきます。
現場で使用されるワクチンには大きく分けて2つの種類があります。
生ワクチン(経口)
口から投与するタイプ。免疫獲得効果が非常に強力で、地域全体に免疫を広げる「集団免疫効果」が高い。費用も抑えられるため、発展途上国での集団接種に適している。
不活化ワクチン(注射)
注射で投与するタイプ。安全性が極めて高いものの、生ワクチンに比べて約20倍の費用がかかる。
パキスタンの現場では、一人でも多くの子どもに一刻も早く免疫を行き渡らせるため、主に「生ワクチン(経口)」を用いた迅速な投与活動が展開されています。
世界のポリオの現状と強力なパートナーシップ
現在、自然界に存在する野生株のポリオウイルスが確認されているのは、世界の中で「パキスタン」と「アフガニスタン」のわずか2カ国のみです。私たちは今、地球上からポリオという病気を完全に過去のものにできるかどうかの、歴史的な瀬戸際にいます。
国際ロータリーのポリオ根絶活動は、「世界ポリオ根絶推進活動(GPEI)」の枠組みのもとで進められています。特に「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」とのパートナーシップは強力で、私たちが拠出した寄付額に対して2倍の額を同財団が上乗せして提供する仕組みが機能しています。また、米国がWHO(世界保健機関)を脱退した時期においても、ポリオ根絶に向けた資金提供は途切れることなく継続されました。
なお、皆様から寄せられた寄付金の使途について、ワクチン自体の購入費充当は全体の約9%にとどまります。残りの大部分は、パキスタン全土で命がけで働く約40万人もの現地のポリオワーカーへの給与や活動費、地域住民への啓蒙活動費、そして安全を確保するための「警備費」など、泥臭く現場を動かす運用支援に充てられているのが実態です。
現場からの提案:水質改善プロジェクトと今後の課題
現地で活動する中で確信したのは、単にワクチンを投与し続けるだけでは、ポリオの完全根絶には至らないという点です。
劣悪な衛生環境と水質改善の必要性
現場の周囲には見渡す限りのゴミの山が広がり、日常的に口にする飲料水には高濃度の塩分や不純物が含まれているなど、衛生環境は目を覆うものがありました。どれだけ薬を届けても、感染の土壌となる衛生環境が改善されなければ、再発のリスクを消すことはできません。
この根本課題を解決するため、私は「クリーンな飲料水を供給する浄水プラントの設置」を当クラブの新たな挑戦として提案いたしました。1基あたり約75万円で設置可能な浄水プラントを、ロータリーの補助金を効果的に活用して現地に複数設置するプロジェクトを、私たちが主体となって推進したいと考えています。
今なお続く世界的な課題として
さらに視野を広げると、ウクライナやガザ地区といった現代の紛争地域・地政学的リスクを抱えるエリアでは、軍事衝突によってワクチン投与が中断されている懸念が高まっています。感染症に国境はなく、一箇所でも空白地域が存在すれば、再び世界中にポリオが再流行する危険性を孕んでいます。
ポリオ根絶活動は決して「終わった事業」や「過去の遺産」ではありません。これから生まれてくる将来の世代のために、現代に生きる私たちが責任を持ってやり遂げなければならない、極めて重要な現代的課題なのです。
私自身、次回のパキスタンミッションにも必ず現地へ赴き、先頭に立って活動を継続していく決意です。
地域と世界をつなぐ奉仕活動
世界スケールの課題解決に挑む「国際奉仕」と、足元の地域社会を温かく支える「地域奉仕」。この両輪を絶やさず推進することこそが、私たちロータリークラブの使命だと実感しています。
現地パキスタンで出会った子どもたちの未来を守るため、そして私たちの地域の子どもたちの笑顔を守るために。大阪グローバルロータリークラブは、これからも国境を越えた情熱と行動力をもって奉仕活動に邁進してまいります。会員の皆様におかれましては、今後とも温かいご支援と積極的なご参加をよろしくお願い申し上げます。